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オンライン環境で失敗しない、オンボーディングの3ステップ

インタビュー

早期の戦力化を促し離職を防ぐため、日本でも「オンボーディング」を実施する企業が増えてきましたが、テレワーク・リモートが一般化したことにより状況は一変。オンボーディングの手法にも変化が必要と感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、株式会社コンカーでHRスペシャリストとして活躍する山崎晴夫さんに、テレワーク・リモート環境で失敗しないオンボーディングの進め方についてお伺いしました。

<プロフィール>
山崎 晴夫 / 株式会社コンカー
株式会社コンカー HRスペシャリスト。パーソル社にてエンジニアを経験後、人事に異動。年間300人採用の新卒採用責任者を経験後、SaaS事業の中途採用領域を携わる。 2020年5月に現職に転職し、採用・研修と「コンカーアカデミー」の企画運営を担当。
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オンライン環境下でのオンボーディング

──オンライン環境のみでオンボーディングを進める場合、どのような課題が発生するでしょうか?

私自身、今年の5月に入社しましたが、9月時点で4回しか出社していません。まさに今回のテーマである「オンライン環境」で中途入社した社員です。

その中途入社した側の気持ちで課題を言語化すると

「周りの社員の忙しさが見えず、お願い事や相談がしづらい」
「人間関係・風土のキャッチアップが難しく、他部門への相談、依頼に時間がかかる」です。

業務上のキャッチアップは、動画ラーニングや資料などを整備すればある程度できるでしょう。

ただ人間関係のキャッチアップは、オンラインのみだと、より心理的ハードルが高まります。

一度対面で会ったことがあり人柄がわかる場合はちょっとした相談もSlackでできます。しかし、テキストコミュニケーションしかない場合はとても気を遣いメール文章を書くなど、時間がかかってしまうでしょう。感覚的には社外の人と同じ距離感です。

こうした緊張状態が続くと、会社に所属している感覚を持てなくなるという大きい障害に繋がりますので、注意が必要です

そもそもオンボーディングとは、「挑戦を阻害する心理的不安要素を排除すること」が目的だと私は考えます。

 “即戦力”と期待され中途入社するスキルフルな人でも、「失敗への不安」「人間関係・風土のキャッチアップ」がネックになり、本領を発揮できないケースはよくあります。

新卒で入社したばかりの社員はより顕著で、目の前の業務に疑問をもったとしても「このような改善提案はしていいのか?」「そもそも自分はこの仕事に向いているのか?」とさまざまな不安が付きまといます。

オンライン環境下により「人間関係のキャッチアップ」ができず、関係性への不安が生じると、このようなケースが発生しやすくなります。

新入社員の挑戦を阻害してしまうと、組織としても一時的なスキル補填の採用になってしまい、それ以上の成長が見込めません。

また個人においても挑戦がないと成長実感が薄まり、退職へ繋がってしまうことも予想されます。

こういった心理的不安を軽減し、横、縦、他部門との人間関係を構築することがオンボーディングを成功させるポイントで、オンライン環境において特に気をつけなければいけないポイントだと思います。

ステップ別(入社前・入社後研修・定着/活躍)、オンラインでのオンボーディング成功のポイント

──オンライン環境下でオンボーディングを成功させるポイントについて、教えてください。

オンボーディングは、ステップに分けて考えることでより精度を上げることができます。

<1> 入社前:横の関係性構築(フラットに相談し合える人がいるか)
<2> 入社直後:縦の関係性構築 (「失敗を恐れない」「人間関係・風土のキャッチアップ」を上長がケアすること)
<3> 定着/活躍:他部門との関係性構築(他部門間とのコミュニケーション機会)

それぞれのステップについて詳しく説明していきます。
オンライン環境下においても、このポイントを抑えておくことが重要です。

<1>入社前:横の関係性構築(フラットに相談し合える人がいるか)

入社は大きな転機です。生活ががらりと変わる人も多いので、結婚で言うマリッジブルーに陥ることも多いです。

特に新卒学生はその傾向になりやすいので、フラットに相談し合える仲間や同じ境遇の人がいることで心強くなります。
だからこそ、同じ境遇のメンバーを集めたグループを、人事が意図的に作ることが重要です。

新卒であれば内定者研修で同期の関係性を作るなども有効だと思います。同期が頑張っている姿に触れて、頑張ろうと思えることもポイントになります。
また、オンラインの場合、座学の研修だけでは相互のコミュニケーションが発生せずに同期の関係性が作れない可能性もあります。研修の内容を工夫したり、研修以外の場でも交流できるようサポートすることが必要です。

<2>入社直後:縦の関係性構築(「失敗を恐れない」「人間関係・風土のキャッチアップ」を上長がケアすること)

新しい環境で「失敗したくない」ということは、誰しもが思うことです。ただし、挑戦に失敗はつきもの。そのため、上長が挑戦の失敗を奨励するコミュニケーションが重要です。

また、会社が変われば、仕事の進め方や考え方も大なり小なり違います。そういった細かいポイントも人事もしくは現場の上長がしっかり伝えること。人事や上長であれば会社の歴史を知っているケースが多いので、

「あの部門のあの人にはこういったコミュニケーションをするといい」
「キーパーソンはあの人」

など具体的なアドバイスができるはずです。

また、「○○に関しては▲▲さんに相談」という窓口を整理し、オンラインの場合は相談の手法(例:チャットツールの○○のチャンネルで、▲▲さん宛に、等)も周知しておくことで、より相談しやすい環境を整えることも重要です。

<3>定着/活躍:他部門との関係性構築(他部門間とのコミュニケーション機会)

同じ部署・部門の中だけだとどうしても視野が狭くなります。将来的なキャリアアップなども考えると他部門との関係性も必要になっていきます。

「あの部門の人とは誰とも会話したことがない」

となると会社全体の雰囲気もいつまでたってもつかめず、帰属意識も薄まる要因にもなります。オンライン環境だと他部門との交流がより少なくなるので、意識的に他部門との交流機会を作ることが重要です。例えば、他部署の先輩をメンターにする、部署や役職などを気にせずにコミュニケーションできる場をつくる、などの施策も有効です。具体的には次で紹介していきます。

具体的にオンラインでの受け入れが上手くいった会社の事例

──ぜひ、施策内容について具体的にお聞かせください。

先ほどお伝えした他部署メンターなども合わせて、弊社では大きく5つのオンボーディング施策を実施しています。

<1>Welcomeランチ
Zoomで全社員が月1回、その月に入社した社員を歓迎する会です。私の時は総勢200名がZoomに参加してくれました。あの場面は壮観で、本当にWelcomeしてくれていると感動したことを覚えています。

<2>メンター制度
年齢や経歴を問わず、入社間もない社員には同じ部署から「メンター」を任命し、社内に馴染めるようサポートをしており、新入社員の素早い立ち上がりに貢献しています。

<3>他部門メンター制度
他部署メンター制度です。他部門だからこそ相談できることや視野の広がりがあり、他部門とのコミュニケーションという観点においても良いきっかけになります。私も現在、営業部長の方がメンターについて頂いているので、様々相談させて頂いております。

<4>バディ制度
部署や役職などを気にせずにコミュニケーションを行い、相互理解と協業を進めるために考えられた制度です。実際には部署や役職をランダムにシャッフル、5〜6人のグループを作り、それぞれのグループで交流を推奨するものです。

<5>絆ミーティング
在宅勤務になってから社員同士の交流が少なくなり、希薄になりがちな絆を深めるべく、毎週1回社長自らがオンラインミーティング開催しています。

笑っていいとも!形式で社歴の長い方から社長と対談するコーナーがあり、昔の苦労話やプライベートな面が知れるので、社歴の浅い社員にはありがたい取り組みです。

上記は新卒入社社員に対しても実施しており、加えて月1で人事がフォロー面談を実施しています。

<3>~<5>は定着/活躍:他部門との関係性構築に該当し、他部門間とのコミュニケーション機会に力を入れています。モチベーション高く入社した新入社員でも、入社3カ月もすると緊張から徐々に慣れてきて、モチベーションが下がりやすくなるものです。

私自身も日々さまざまな他部門の社員と会話ができるのは、新鮮な刺激を受けることができる良い機会だと感じています。

おすすめの書籍

──今回のテーマについて学びたいと思っているHRパーソンに向けて、お薦めの書籍があれば教えてください。

①タイトル:U理論

 著者名:C・オットー・シャーマー

選定理由:人や組織が変われない本質的な理由は能力ではなく「怖れ」や「過去への愛着」であるとすれば、そういった自己認知を徹底的に認識することから始まります。
そのために「なにから手をつければいいのか?」という問いに、包括的かつ実践的にアイデアを提供してくれるのがこの本です。

 ②タイトル:「空気」の研究

 著者名:山本 七平

選定理由:組織において、意思決定を左右する最大の要因を「空気」であると指摘しています。この本の一番の意味は、「空気と組織のパフォーマンス」について意識的に考えられることだと思います。ジャック・ウェルチや本田宗一郎が苦慮していたのも「いかにKYをつくるか」ということでしたので。                                                  

 ③タイトル:最高の働きがいの創り方

 著者名:三村 真宗

選定理由:社長の三村が7年掛けていかに泥臭く組織作りに取り組んだのか、背景や洞察が記載されており大変勉強になるとともに、今の「働きがいのある会社」No1になるまでの試行錯誤の軌跡を知ることができます。

編集後記

今回のお話のポイントは、「ステップごとに分けてオンボーディングを考える」という点です。管理が十分にできないオンライン環境では、オンボーディングとは名ばかりの、属人的でその場しのぎの研修に陥りがちです。ですが、ステップに分けて施策を講じることで、継続的かつ効果的な、組織の一体感を高める人材定着・育成プロセスとしてオンボーディングを機能させることが可能となります。

自社の人材定着・育成プロセスをステップごとに見直すことが、オンライン環境でのオンボーディング成功の鍵といえるのではないでしょうか。

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