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その1on1ミーティング、本当に効果がありますか?効果的な運用と事例紹介

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1on1ミーティングは、2012年にヤフーが導入したことで話題になりました。現在では多くの企業が1on1を導入していますが、効果的に運用できていないと感じる企業が少なくないようです。

そこで今回は、1on1の先駆けとなったヤフーにて、管理職への1on1トレーニングの講師実績を持つ大内礼子さんに、その効果的な運用方法や実際の事例などを含めてお話をお聞きしました。

<プロフィール>
大内 礼子
ソフトバンク社にて10年以上人事として活躍し、採⽤・⼈材開発・組織開発・ダイバーシティ推進の領域を経験。特に人材開発の領域に強みを持ち、ソフトバンクの社内大学や、グループ会社であるヤフーでの管理職育成では、企画・導入・運用を一貫して経験。
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1on1が注目されるようになった背景

───1on1が注目されるようになった背景には何があるのでしょうか。

近年の働き方改革やダイバーシティ推進により、職種・言語・性別・働き方など多様な背景を持つ部下をマネジメントする管理職が増えてきました。加えて、新型コロナウイルス対策としてテレワークが加速したことで、オンラインでマネジメントするシーンも増加しています。

このような変化から、組織の求心力を維持することは以前よりも難しくなってきています。そこで、メンバー1人ひとりと細かいコミュニケーションをとれる1on1により注目が集まっているのだと思います。

実際に、昨今のテレワークによる変化が、パーソル総合研究所の調査結果からも見てとれます。

「テレワーク実施前後の変化」
※パーソル総合研究所の調査結果より引用

「テレワークの不安」
※パーソル総合研究所の調査結果より引用

テレワークが一般的に普及してきたことで、今まで以上に部下との相互理解を深め、成長をサポートするマネジメントが求められるようになりました。よって部下と対話する1on1への重要性は、今後ますます高まってくると考えています。

1on1の「目的」と「効果」

───「部下の成長をサポートすること」が1on1であると伺いましたが、より具体的な目的と効果を教えてください。

まず前提として、1on1は「部下のため」のもの

そして「部下の成長の舞台を作る」ことが上司の役割となり、1on1における最大の目的は、部下の「経験学習サイクル」を促進することになります。

「経験学習サイクル」とは、組織行動学者デービット・コルブが提唱する、人の学習サイクルを4段階に表した理論のことを指します。

「経験学習サイクル」
※組織行動学者 デービット・コルブが提唱した「4段階の学習サイクル」を元に作成

人は、「経験」→「内省」→「概念化」→「実践」のプロセスを辿って成長します。経験をただ重ねるだけでなく、振り返り、経験から得た学びを言語化することが特に重要です。

しかし、日々の業務に追われている中では、内省や概念化をメンバー自身が1人でこなすことはとても困難です。そこで上司が1on1で介入し、「内省」→「概念化」を促進してあげることで、部下は経験を学びに変えることができ、成長スピードを早めることができます。

「内省」→「概念化」を促進する方法としては、以下のステップに分けて取り組むことをオススメします。

・経験したから気づくことのができた「学び」を言語化する
・その「学び」を「次回への教訓」として抽象化する

また、米国ロミンガー社の調査によれば、人の成長に寄与する割合は、7割が「現場経験」、2割が「上司や先輩からの薫陶」、1割が「読書や研修」と言われています。この7割を占める「現場経験」を1on1で振り返ることは、部下の成長に大きく影響すると言えるでしょう。

さらに、1on1による効果は成長だけではありません。以下3つのような効果も認識しておくべきです。

(1)コミュニケーションのきっかけとなる

定期的に対話する場を設けることで、部下は上司に自分の意思や考えを伝えやすくなります。相談したいこと、緊急ではないけれど困っていること、普段から考えていることなど、日常のMTGで話すレベルではない些細なことであっても、1on1の中であれば伝えることができるからです。特にテレワーク環境下においてはよりその重要性を実感することでしょう。

(2)部下への理解が深まる

部下の話を聞くなかで、その言動の背景にある考え・感情・価値観などに触れることができます。「その時どのように考えたのか」「なぜこの判断に至ったのか」など、行動の裏側にある理由を知ることで、部下への理解を深めることができます。

(3)部下が自発的に考えるようになる

1on1は、上司が一方的に指導したり答えを与えたりする場ではなく、部下自身が振り返り、学びを抽出する場です。上司との対話を通じて部下は内省を繰り返しながら自分と向き合い、次はどうしたらいいかを考えていきます。これを繰り返すことで、自分の頭で考え行動することを習慣化していくことができます。

より効果的な進め方と、注意するべきポイント

───1on1が昨今のマネジメントに効果的であることは理解できましたが、実際にどんな形で進めていくのがよいでしょうか。また、その際の注意点なども教えてください。

まず、一般的な1on1の流れに沿ってポイントを解説します。

(1)テーマ・ゴールを決める

1on1の冒頭で、「今日のテーマは◯◯」と、「何のための時間なのか」を必ず決めておきましょう。お互いの意識づけのため、また話が逸れた際に本来のテーマに戻すためでもあります。

(2) 部下の話を聴く

まずは部下の話を真摯に聴きましょう。表層的な状況理解だけでなく、その背景にある考えや感情、価値観などを理解しようと努めることが大切です。

(3)行動を促す

現場経験から学び(教訓)を言語化し、その学びを今度どのように活かしていくかを部下と一緒に考えます。

(4)サポートを申し出る

部下がスムーズに行動できるよう、必要なサポートを上司から申し出ます。

(5)感謝・承認・激励

部下への感謝を述べて終了です。

ここまでが一般的な1on1の流れです。終了後は「1on1で話した行動をとれているか」「どんな変化があったか」といった観察やコミュニケーションを、日常業務の中で行っていきます。

この流れだけを見るとシンプルで導入しやすいように感じるかもしれませんが、いくつか注意するべきポイントがあります。以下に3つの失敗例を紹介しながら、そのポイントについて解説します。

(失敗例1)1on1の目的を見失う

「他社がやっているから」など安易な理由での導入は危険です。1on1はあくまで手段。それ自体が目的になってしまうのは本末転倒です。「何のために1on1を活用するのか」を明確にし、目的をはっきりさせてから運用開始しましょう。

1on1は「部下のための時間」です。間違っても進捗確認など上司都合の場にならないよう、目的を明確にしてコンセンサスを取ることが重要です。

(失敗例2)1on1の効果が感じられず焦る

大前提として理解しておくべきことは、「すぐに目に見えた効果が現れることはほぼない」ということです。まずは1on1が社員の日常の中に定着していくことを目指しましょう。本音で対話することが組織内のカルチャーとして浸透すると、部下との関係や日々の言動に変化が生まれてきます。

(失敗例3)1on1で部下が話をしてくれない

1on1をしても部下が本音で話をしてくれるとは限りません。そこには、日々の信頼関係が影響してきます。部下が話をしてくれないと感じる場合、まずは声がけ、観察、フィードバックなど、日常業務内でのコミュニケーション頻度を高め、信頼関係の土台づくりから始める必要があります。

───テレワーク環境下においては、1on1の運用も難しくなる気がします。特に注意するべきポイントはありますか。

おそらく、上司の方の大半が「テレワークにより部下への声がけ・雑談・観察の機会が減った」と感じているはずです。それを補うべく、1on1の導入を検討している方も多いとは思いますが、テレワーク環境下においてはそれだけでは十分なコミュニケーション量を担保しきれないこともあるように思います。

そんなときは、コミュニケーションの「量」ではなく「頻度」を高めることをオススメします。例えば、以下のような場が定期的にがあることで、部下のコンディションの変化にも気づきやすくなります。

オンライン朝会/雑談

毎朝10〜15分、メンバーが集合して、顔合わせや近況を共有する場を設ける など

オンラインランチ会/飲み会

業務から離れてコミュニケーションが取れる場を設ける など 

オンライン作業会

毎週固定の時間は、オンラインで接続しながら各自が作業をする など
(その際、映像はオフでもOK。相談や声がけしやすい環境づくりが目的のため)

ヤフーの取り組み内容

───大内さんから見て、1on1をうまく運用している企業の事例があれば教えてください。

やはり日本でも1on1を先駆けて導入したヤフーは、うまく運用されていると感じます。ここでは私がヤフーに在籍していた時代の2つの取り組みをご紹介します。

手ぶらで1on1

1on1のテーマにもよりますが、特段必要がなければPCも何も持たずに、身ひとつで目の前の相手と対話していました。1on1中は日常業務から離れて、上司なら部下の話に集中し、部下なら内省に集中するためです。

内省は、自分の頭や心の中を言語化していく作業。できるだけ関係のない情報を遮断し、自分に向き合える環境づくりをする必要があります。なんとなく業務の延長でPCを持っていってしまったり、PCを見ながら業務の指示ばかりしてしまったりする方は、思い切って手ぶらで臨んでみるとこれまでとは違う結果が得られるかもしれません。

音声のみで1on1

テレワーク中はZoomなどオンラインMTGツールを活用することが多いと思います。その際、あえて映像はOFFにして音声のみで1on1をしてみてください。視覚情報をなくし、音声だけに意識を集中すると、その声色や内容からそれまで気づかなかった相手の状況を汲み取れることがあります。

お互いの顔が見えないことに不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、見た目だけで判断してしまう等のバイアスを軽減できるメリットもあります。また、個人的には音声のみのほうが本音を話しやすいようにも感じます。ぜひお試しください。

1on1の発展バージョンとは

───1on1から派生した取り組みがあると聞きました。その目的・方法・効果なども合わせて教えてください。

いくつかありますが、その中でも特に効果的だと感じるものを2つほどご紹介します。

ナナメ1on1

隣の部署の上司など、いわゆる「ナナメの立場の方」と行う1on1です。直属の上司ではないけれど、その相手や担当業務について理解がある関係性の方が理想的です。

目的は「第3者の視点からのフィードバックを得ること」。日常の自分や組織とは異なる角度からフィードバックを受けることにより、これまでにない視点を学ぶことができます。こういった機会は部下自身だけでは作りにくいもの。上司が積極的に機会を作ることで、部下の視野や視点を広げることができるでしょう。

新入社員と先輩との1on1

新入社員の不安を解消することを目的に、すでに実施されている企業も多いと思います。良い取り組みではありますが、少しだけ注意が必要です。

例えば先輩社員が1on1に慣れていない場合、新入社員の振り返りを促す前にアドバイスや指導をしてしまうケースが多々見られます。1on1はこれまでご紹介した通り、経験学習サイクルをうまく回し成長を促すためのものです。業務上の指導とは切り分けて運用する必要があります。

それを改善するためにオススメなのが、「振り返りシート」の活用です。そのシートには以下3つの項目があります。

(1)その週うまくできたこと「Good」
(2)その週うまくできなかったこと「Motto」
(3)次回へ活かしたい学び「Next Action」

新入社員は「Good」と「Motto」を記入してから1on1に臨みます。1on1ではシートを見ながら「Good」「Motto」について対話をし、最後に「Next Action」を言語化します。

この振り返りシートは、経験学習サイクルの「内省」→「概念化」を促すための補助的なツールです。シートに可視化されることで、お互いに共通認識を持って振り返りができるようになります。また、振り返り内容がシートに一覧化されるので、数ヶ月経って見返すと新入社員の変化や成長を感じることもできます。

オススメ本(2冊)

───1on1ミーティングについて学びたいと思っているHRパーソンに向けて、お薦めの書籍があれば教えてください。

ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法/本間 浩輔(著)

1on1の導入を検討している人事や組織の責任者に読んでほしい1冊。ヤフーが1on1の導入を決めた背景にある「人事観」を学ぶことができます。なぜ1on1なのか、そこにどのような思いがあったのか。組織への導入目的を整理するヒントになるはずです。

自分の小さな「箱」から脱出する方法/アービンジャー インスティチュート(著)

テクニックではなく、人と人とのコミュニケーションのあり方について気づかせてくれる本。正しい1on1をしなければと気負ってしまっている方、部下とのコミュニケーションに悩んでいる方に読んでほしい1冊です。

編集後記

テレワークが進んできたことで、「部下とコミュニケーションをとらなくちゃ」と思う機会はこれまで以上に増えたように感じます。そこで「1on1をやってみよう」と思い立ち始めたはいいものの、うまく運用できず、効果も感じられないため辞めてしまった、という方も少なくないでしょう。

大内さん曰く、「1on1は特効薬ではなく漢方薬」とのこと。この記事で紹介されたポイントに留意して「継続」することこそが、1on1の効果を最大限享受できる秘訣なのだと感じました。

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