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SNSを活用したタレントプール形成・採用力強化の方法

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事業に必要な人材獲得競争が続く昨今、リソース(資金・人員)が限られた中での採用力強化のために「SNSを効果的に使い、独自のタレントプールを形成したい」というニーズが増えています。

ただ、「SNS経由でタレントプールを形成する」と言っても非常に幅が広く、どこから手をつけて良いかイメージしづらいものです。そこで今回は、日本マイクロソフトやSansanなどでSNSを活用したダイレクトソーシングと、タレントプール運用してこられた実績を持つ新田順さんに、その導入方法や実際の事例などを含めてお話をお聞きしました。

<プロフィール>
新田順
アマゾンジャパン合同会社にて研修サポート~コンテンツ制作を経験した後、日本マイクロソフト社でタレントソーサーとして活躍。ダイレクトリクルーティングをメインの手法とした媒体選定・採用要件・母集団形成・面談までを経験。また、社内外のイベント企画運営も担当。その後、クラウド系サービスのIT企業にてリクルーターとして採用全工程を経験。現在はフリーランスとして複数社の採用コンサルタントとして活躍中。

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SNS採用とタレントプールの関係とは

───タレントプールとはなんでしょうか。また、SNSでの採用活動とどのように関係するのでしょうか。

タレントプールとは、候補者(タレント)をリストで一元管理(プール)することを指します。営業部で例えるなら「リード(見込み顧客)」に当たるものです。

SNS経由で繋がった候補者とは、基本的に中長期的なお付き合いになることが前提です。そのため、この「タレントプール」の構築が非常に重要になってきます。

なぜならば、「SNSを転職活動の用途で使っているユーザーはごく一部しかいない」からです。転職活動しようと思った際、日本では転職サイトに登録したり、エージェントサービスに登録してカウンセリングを受けたりすることから始めるのが王道です。

つまり、SNSを活用したダイレクトソーシングは「転職意思がない方と接点を重ね、自社の魅力を伝えて採用決定に繋げる」ということなのです。

自分のTwitterやFacebookに「うちの企業いかがですか?」と突然メッセージが来たと想像してみてください。もともと興味を持っていた企業からのメッセージであれば問題ないかもしれませんが、そうではなかった場合、最悪ブロックしたり通報したりといった行動にもつながる可能性があるでしょう。

いざ転職しようと思ったときに第一想起されるよう、自社内でタレントプール化して繋がりをずっと保ち続ける。これこそが、SNSを活用したダイレクトソーシングであると頭に入れておきましょう。

無料で採用候補者と出会えるSNSには「競合が少なくブルーオーシャン」という良い部分がある反面、「潜在層へ・長期的に採用活動をすることが前提」という地道な労力が求められる面があることを、前提として認識する必要があります。

SNS(twitter、LinkdIn)を活用したダイレクトソーシング方法

───「SNSダイレクトソーシングは地道な活動である」と踏まえた上で、具体的にどんなことから始めるのが良いでしょうか。

LinkedIn Twitter Eight
オススメ度
個人
運用
企業
運用
料金 無料
※有料プランあり
無料 無料
※有料プランあり
会員数 200万人 4,500万人 265万人
登録者傾向 ビジネス ビジネス
/プライベート
ビジネス
ソーシング方法 ①友達申請+メッセージ
②(申請承諾後)交流
③DMにて声かけ
①フォロー
②交流
③(相互フォローとなったら)DMにて声かけ
※相手がDM開放時は任意
①知り合い申請
※知り合いでない場合通報される可能性あり
②(申請承諾後)交流
③DMにて声かけ

yenta Facebook Instagram LINE公式
オススメ度
個人
運用
×
企業
運用
×
料金 有料 無料 無料 有料
会員数 1,6万人 2,800万人 3,300万人 8,000万人
登録者傾向 ビジネス ビジネス
/プライベート
ビジネス
/プライベート
ビジネス
/プライベート
ソーシング方法 ①いいねを送る
②(マッチング後)交流
③会食時に声かけ
①友達申請
②(申請承諾後)交流
③DMにて声かけ
①フォロー
②交流
③(相互フォローとなったら)
DMにて声かけ
※相手がDM開放時は任意
①登録していただく
②登録者へDMにて声かけ

いきなり色々な媒体を始めてしまうと、アカウント運用が困難になり、企業のブランディングに悪影響が生じてしまいます。目的に沿ったSNSを選び、いくつかに絞り込んで運用をスタートするのがオススメです。

まず、それぞれの特徴を上図に整理してみました。ちなみに、私のおすすめはLinkedInとTwtitterです。この2つの媒体における前提・目標・手段を整理してみましょう。

LinkedIn

<前提>

世界No.1のビジネスSNS。ビジネス目的で利用している人がほとんど。日本での利用者数はまだ少なく、多くの利用者が外資系企業の社員。

<目標>

・採用色を漂わせすぎず、複数人でご飯にいけるくらいの人間関係を構築する
・ふと転職を考えた際に、第一想起されるくらいの人間関係を構築する

<手段>

・繋がり申請する場合は、必ずメッセージで申請理由をつける(いきなり転職の話はしない)
・申請を行う側(企業の採用担当)の職務経歴を細かく記載する(採用担当者の経歴が浅い場合、人事部長/役員などの役職者のアカウントを使うのも手立てとしてはあり)
仕事9.5:プライベート0.5の割合で投稿(本気で活用したいのであれば、繋がり申請/スカウトだけではなく、アカウント自体の運用も必須)
∟仕事(採用/イベント情報の告知もOK)
∟プライベート(ビジネスSNSなので、同僚の誕生日などに留めた方が良い)

繋がり申請時のコメントでいきなり「当社のこのポジションはいかがでしょうか?」と送ってくるリクルーターが実は90%ほどいます。ここと差別化するためにも、いきなり具体的な話ではなく、ゆるいつながりを打診することを目標にする方が良いです。

メッセージ例:

「xxさんと将来的に何かしらのご縁があるかもしれないと思い、中長期的な観点で繋がり申請をお送りしました。もしよろしければ、ご承認いただけますと幸いです。」

LinkedInの場合、相互で繋がらないとフィード上で採用情報を流しても届きません。またメッセージのやり取りもできないため、まず繋がるということを大切にしてください。

Twitter

<前提>

人間関係の構築が大切なSNSツール。

<目標>

・採用色を漂わせすぎず、複数人でご飯にいけるくらいの人間関係を構築する
・ふと転職を考えた際に、第一想起されるくらいの人間関係を構築する
・個人/会社名を信用してもらうため、交流を通して3~12カ月でフォロワー1000人を目指す

<手段>

・名前欄に会社名の記載必須
・プロフィールは160文字いっぱい使って書く
仕事8:プライベート2の投稿
 ∟仕事(採用/イベント情報の告知はほどほどに)
 ∟プライベート(ビジネスアカウントで運用する前提であることは忘れずに)

Twitterは楽しく・活発に交流をして人間関係を構築することが重要なツールです。気になる方がいれば積極的にフォロー・いいね・リプライを行って交流していったり、リスト機能を使って定期的な情報収集をしていったりすることがポイントです。

「Twitter採用」はここ1〜2年で盛り上がりを見せており、その始めやすさから運用もしやすいように思いがちですが、実はその反対。地道に交流しフォロワーを増やしていくことが求められるため、通常の採用手法がきちんと回っている上で運用すべき施策です。

つながりを持った採用候補者をタレントプール化する方法

───SNSでつながりを持てた方をタレントプール化することが重要とおっしゃっていましたが、具体的にはどのように取り組むのでしょうか。

優秀なATS(採用管理システム)があれば、それに登録することで自動的にナーチャリングのリコメンドなども出て便利です。ただ、そういったシステムが導入されていない企業も多いはず。その場合、Excel(Googleスプレッドシート)でも十分な管理が可能です。

登録日 2020/07/01
氏名 田中太郎
ふりがな たなか たろう
年齢 25
性別 男性
媒体 LinkedIn
媒体URL http~
ポジション 営業
企業名 株式会社◯◯
職種内容 ◯◯向け営業
メモ 転職は2022年ごろ考えている
スカウト 6/1
返信 7/1
再連絡 8/1

このタレントプールの構築/管理が、SNSのダイレクトソーシングの肝となります。ポイントは、「候補者との接点を持ち続ける仕組みを作ること」です。

まず、Excelで上記のようなリストを作成します。その後、以下3点に留意して運用を続けていきます。

「再連絡」する日を記載する
・フィルター検索で、「再連絡」の日を毎日確認する
・候補者との接点の記録を全て「メモ」に書き留める

このリストには、繋がっている全ての候補者を記載してプールしてください。また実際につながりはないものの、噂でこの方が優秀だといった情報も含めて記載することをオススメします。名前だけでも入力しておけば、時間を置いてからLinkedInやFacebook等で検索して情報収集をすることができるからです。

リストを運用する上で最も大切なことは、「Excelのシートをいくつも作らず、可能な限り1枚のシート内で収めること」です。それによりフィルター機能がよりスケールし、中長期的な採用戦略に役立ちます。地道な方法ではありますが、登録候補者数が100名近くになってくるとこのリストの重要性を実感することができるでしょう。

タレントプールから採用に繋げた好事例

───タレントプールを効果的に運用し、採用へと繋げていくにはどうすれば良いでしょうか。実際の事例も含めて教えてください。

本記事のテーマである「SNS」から離れてしまいますが、「タレントプールの活用」という点において、私が2017年に日本マイクロソフト社で行った実例をご紹介します。

<前提>

マイクロソフト社には2000年頃からATSが導入されており、そこに候補者情報が蓄積されていました。しかし、2017年時点でのATSは残念ながらとても使いづらいものであり、私を含めた大半のメンバーがATSを使わずに独自で候補者情報を管理していました。

そんな時に、当時のタレントプールが枯渇してしまい、ATSから候補者の掘り起こしをせざるを得ない状況に追い込まれたのです。試しにATSの情報をExcelに落としてみたところ、中身は全く整っておらず絶望的な状態でした。しかし同時に、この情報をどうにか活用できれば採用につながるかもしれないと直感が働き、データのクレンジング作業を始めたのです。

<アクション>

以下に簡単に流れを記載します。

①過去選考で落選となった方々をATSからExcelへ抽出
②そのExcelからさらに以下4つを抽出
 ∟選考日が3年以上前の候補者(落選後の候補者の成長を加味するため)
 ∟募集中の類似ポジション経験者(セールス募集ならプリセールスやコンサルタントなど)
 ∟最終選考で落選となった候補者(最終選考までは通過=一定の実力はある、という仮説)
 ∟上記3つに当てはまる候補者のメールアドレス(ない場合は履歴書やグループメールアドレスから検索)
③候補者にイベント情報の連絡をする
④イベント参加→御礼メール→選考誘導→選考→内定

ファーストコンタクトは慎重に設計する必要があるため、いきなり「もう一度当社を受けませんか?」といった連絡はしない。まずは再度接点を持つためにイベント誘導を行ったことがポイント。

メール文例:

「以前当社の選考を受けていただいた方へご連絡しております。xxというイベントがございますので、興味をお持ちの方はご連絡ください。情報削除希望の方は、その旨をお知らせください」

<結果>

500名掘り起こし(イベント誘致メール送付)→返信25名→イベント参加20名→選考8名→採用1名

このケースは、意図的に作ったタレントプールではなく、候補者の進捗管理用として蓄積したデータがそのままタレントプールになった例です。当初からこのような先の状況を見据えてタレントプールを構築できていれば、よりスムーズに成果を出すことができたと思います。

オススメ本(3冊)

──ダイレクトソーシングやタレントプールについて学びたいと思っているHRパーソンに向けて、オススメの書籍があれば教えてください。

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0/トム・ラス(著)

9つの性格/鈴木 秀子(著)

企業の採用活動において最も重要なのは、適材適所な採用ができるかどうかです。それには「相手を知る力」が必要なことは言うまでもありませんが、同様に「自分自身を知る力」がなければベストマッチな採用を実現することができません。そのためにもこの2冊は非常にオススメです。

ちなみに、以前勤めていたSansan株式会社では、全ての新入社員がこの2冊を読み、付属の性格テストを受けてチーム内で発表・共有することが義務付けられています。この結果から相互理解を深め、生産性を高めています。

やり抜く力 GRIT/アンジェラ・ダックワース(著)

やり続けることの大切さを説いた有名な書籍です。通常採用はもちろん、今回ご紹介したSNSによるダイレクトソーシングは特に継続性がモノをいう手法です。だからこそこの本を選定しました。

先ほど紹介した日本マイクロソフト社の事例では、成果が出るまでに3ヶ月間かかりました。途中で何度も「このやり方で本当に大丈夫なのか」と自問することがありましたが、諦めずにやり抜いたことが成果につながったと考えています。ダイレクトソーシングはそれ以上に時間がかかる手法です。ぜひ諦めずにGRITしてほしいと思います。

編集後記

「無料で採用できる」「実際にTwitter経由で採用できた」といった話を聞くと、SNS採用はとても手軽に実施できる採用手法だと勘違いされがちです。しかし実際は、新田さんの話でも何度も出てきたように、タレントプール化して長い期間をかけてマーケットや候補者との信頼関係を築いていく必要のあるものであり、一朝一夕でどうにかなるものではありません。

しかし、一度土台を築くことができれば、その後は強力な採用手法となってくれることでしょう。「すぐには結果が出ないもの」と割り切った上で、なるべく早い段階から運用を始めていくことが、SNS経由でタレントプールを形成し、採用成功するための近道なのかもしれません。

Category : 人事のノウハウ
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