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企業インタビュー

「100人の壁」を乗り越えて、”非連続の成長”の実現へ。人事制度改革によるスタディストの挑戦。【後編】

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スタートアップ企業が拡大期に直面しやすい「30人・50人・100人の壁」と言われる課題があります。
今回のインタビューでは、組織拡大を見越して2020年2月に大幅な人事制度の改革を行った株式会社スタディストCFO山下 公平さんにお話をお聞きしました。
【前編】では、組織拡大に伴って起きていた課題と、どのような人事制度に変革したのかをお話いただいています。こちらの【後編】では、人事制度改定のプロセス、関係者の巻き込み方についてご紹介していきます。

<プロフィール>
株式会社スタディスト 取締役 CFO 管理部長 山下 公平
東京大学大学院工学系研究科物理工学科卒。野村證券投資銀行部門においてM&Aアドバイザリー業務に従事。2011年から米国マサチューセッツ工科大学スローン校に留学し、MBA取得。
「会社経営に携わる」という想いを実現するため、キャリアを活かせる可能性を模索する中、創業者の描くビジョン・ミッションに強く惹かれて2016年12月株式会社スタディストに参画。財務・経理本部長として、資金調達から組織戦略、採用設計まで管理部門を担っている。

▶︎【前編】はこちら

人事制度改定を浸透させるためのプロセス

―――改めて前回の続きとなります。改正前の評価制度はMBO(目標管理制度)とのことでしたが、どのような問題が起きていたのでしょうか。

MBOでは「成果目標を達成できたかどうか」が評価基準になるので、例えば、たまたま一発ホームランで達成した(プロセスが抜けている)メンバーをどうするかという問題がありました。また、評価者がたまに「彼は最近いい感じだから」と目標設定と関係ないところで評価してしまうなど、形骸化しているところもあったと感じます。それも間違いではないのかもしれませんが、それだと、一人ひとりが今期の達成すべき内容を考え、宣言をし、コミットしていくという行為が無駄になってしまうじゃないですか。私たちがもっとアーリーフェーズだったらよかったかもしれませんが、さすがにそういう時期でもないと感じていました。

あとは、昇給昇格が年に1回しかなかったので、会社の成長スピードと合っていなかったですね。逆も然りですが、1年単位ではなくもっとスピーディーに反映させていきたいというのがありました。
そのため、評価タイミングは半期に1回に増やし、OKRも並行して運用することでPDCAは週単位で回るようにしていきました。

―――評価制度を変えることについて、現場の皆さんはどう捉えていたのでしょうか。

評価制度を変えることに関して、納得しているか否かは個々人にあると思います。ただ今回の変更に関して、「なぜそれをするのか」「どういうことを実現するために変更するのか」といった背景が浸透するよう、評価制度の話をする前から「急成長をしないといけない」というメッセージを伝え続けていました。なので、「急成長に向けて組織を変えていきたいんだな」という理解は得られていたと思います。

ここが一番苦労した部分でしたが、とにかく全体会議の場などで、これからは非連続なものを生み出していく必要がある、グロースしていかなきゃダメだということを言い続けていたんですよね。やはり今までとは違うことを言い出すわけで、ネガティブに捉える人も当時はいましたが、私たちがやりたい方向性をきちんと伝えることはできたのではないかなと。

―――評価制度変更をどのように進めていったのでしょうか。

まずは経営ボードの中で議論を重ね、方向性やポイント、目指すところなど大枠の要件を確定させました。お伝えした通り私は人事経験がそこまであるわけではありませんので、最初に10社以上の有名なベンチャー企業の人事の方々に話を聞きにいきました

評価制度について細かく聞いていったのはもちろんのこと、どうしてそのように設計したのかといった背景や裏側について細かくヒアリングしました。あとは、会社の成長フェーズとどのように評価制度を変化させていったのかなど、多角的に聞いて、その聞いた内容をまとめて、どういう部分が参考になるか、自社に当てはめて考えていきましたね。そして、実際の工数や運用をイメージしながら、難しそうなものは削ぎ落としていく。グランドデザインを作成し、経営陣に合意をとり、その後主要マネージャーたちにβ版を見せるという流れで進めました。

―――β版の時点でマネージャーたちへ展開したのですね。

そうです。ここの巻き込み方は一番配慮しましたね。ざっくりした状態でいろんな人を巻き込んでも議論が散乱してしまうし、欠陥など重箱の隅を突こうと思えばいくらでも見つけられちゃう。逆に、完成形をぶつけると「なんで共有がなかったんだ!」と反論を生むことにもなりかねない。どのタイミングで共有すべきなのかは慎重に考え、ある程度固まったβ版のタイミングで見せることにしました。

またβ版の共有は、運用イメージを持てるかどうか確かめることも狙いでした。現場が見えているからこその視点もあって、「変えない」と意思を持って決めていた部分以外では、反映できるものはとことん吸収するようにしました。そのあとで、完成形をメンバーに共有した感じです。

―――「変えないという意思を持った部分」があったとおっしゃいましたが、変えない部分はどのようなところだったのでしょう。また、マネージャー陣からはどのような意見が上がりましたか。

絶対に変えないと決めていたのは、グレードテーブルの評価項目・要素(スキル、アウトプット、グロース、プロセス、プランニング)ですね。表現は適切なものを相談して決めていきましたが、軸となる評価要素は変えませんでしたね。やはり、急成長をしていくためには必要不可欠ですので。

マネージャーからの意見としては、メンバーが理解できるようにグレード要件をわかりやすく書いてほしい、詳細に決めてほしいという要望がありましたね。

この点に関しては、10社以上に話を伺った時に私が得た感覚ではあるんですが、カルチャーがしっかり醸成されている会社ほど、グレード要件が曖昧な傾向があったんです。カルチャーがメンバーまでに浸透してたら、「あぁそれってこういうことだよね」って、みんな共通認識がしっかり統一されているので、自由に解釈をしてもぶれないんですよ。

一方でカルチャーがまだ固まっていな場合、要件をふわっと書いちゃうと納得感を得られにくいが、細かく設定しすぎると自由度がなくなって評価しづらくなる…というバランスが難しいところでした。

我々はまだカルチャーが強い会社ではなかったので、比較的要件を具体化していきましたが、ある程度のラインでやめました。メンバーに裁量というかフレキシビリティを持たせたかったんですね。ですから、マネージャーたちにも「ここまでは具体化しますが、これ以上は詳細化しません」としっかり伝えました。あまりにも詳細まで落とし込んでしまうと、現場マネージャーからしたら、営業の場合はこうだけど、エンジニアの場合は違うとか。各職種の前提条件も組みとってほしいとか。それぞれの立場で異なるケースが発生しますからね。

―――なるほど。そこはあえて自由度を持たせたわけですね。

そうですね。評価の詳細化についてはマネージャーに移管し、やり方は各部門に任せることにしました。その仕事やそのメンバーにとって、また会社として、今何をやるべきなのか、というのは各部門に考えてもらいます。もちろん、分からないこと、やりづらいこと、困ったことなどはタイムリーに人事に報告・相談してもらい、都度ケアしています。人事としても、改善ポイントを収集しておいてしかるべきタイミングで修正・ブラッシュアップしていく予定です。

―――完成した評価制度を、メンバーに広報するタイミングではどのようなことに気をつけたのでしょうか。

「急成長」「非連続」など、結構伝える上でパワーワードですから、丁寧に説明していきました。会社の方向性やビジョン、なぜグロースしないといけないか…など根幹の部分は代表からの熱いメッセージを伝えてもらうようにしました。そして、その上で細かい評価制度については説明会を開催して補足するようにしました。

先ほどもお伝えしましたが、評価制度に納得してもらうことよりも、「急成長」「グロース」という文化の浸透がやっぱり一番苦労しましたね。

過度に言いすぎた部分もあり、一部の社員には「華のある仕事以外は評価されないのではないか」という誤解を生んでしまったこともありました。

―――言葉によって、メンバーの受け取り方も異なってきますよね。具体的に誤解というのはどのような内容だったのでしょうか。

例えば、バックオフィスでも仕組みを変えて、生産性を上げてといったことで十分価値を出すことって可能じゃないですか。立派な非連続な価値の創出だと思うんですが、そのような例を出さずに、わかりやすいプロダクト開発や営業などの話ばかりしてしまったんです。

そのためバックオフィスやサポートメンバーに「自分は評価されないのかな」と感じさせてしまうことがありました。

直接私に提言があったものは、もちろん丁寧に時間をとって説明をしていきました。ただすべてが私宛に届くわけではなかったんですよね。その際、各マネージャーが対応してくれたようなことはあったと思います。なので、制度設計のプロセスの中でマネージャーに時間をとって議論したことは、そういったメンバーのケアや浸透という意味でも重要だったと思います。

人事はサポートに徹底。現場主体の制度運用へ

―――人事制度を変更して数カ月経ちました。評価する側も評価される側も戸惑いもあったかもしれませんが、管理側としてどのように運用フォローをされているのでしょうか。

もう少し管理側で手厚くサポートすべきかもしれないのですが、現時点では運用は現場に任せています。どちらかというと丁寧にケアすべきなのは、OKRですね。もちろん組織によってはOKR運用が合わないところもあるかもしれません。「うまく活用すればバリューがあるよ」とOKRの意義を伝えたり、有志によるサポーターが稼働に関して面倒を見ていたりしています。

―――例えば、マネージャーとメンバーとの面談の頻度や振り返り方法、評価の付け方などの指導はされているのですか。

一応人事としては、「四半期に一度振り返りましょう」というマスト項目は伝えています。しかし、各自1on1を主体的に行っていますし、そこは現場の判断に任せていますね。しかし、1on1の内容やコーチングの仕方といった研修やノウハウについてはまだ整理できていないので、この部分は改善の余地があると思っています。

制度を変えてからまだ最初の評価タイミングが来ていないので、運用をしながら出てきた課題を丁寧に見つけ、日々そこをなんとかしようと考えながら動いております。

―――グレード制度の導入前後で、社員の雰囲気など変化は見られましたか。意見が出るようになった、動き方が変わったなど変化があれば教えてください。

この制度がきっかけというよりも、私が各部署と意見交換をしながら、「グロースしていこう」と言い続けるうち、共感してくれる人が出てきたのはありますね。自分自身、話しながら「何を変えるのか」「何は既存のままでいいのか」を整理していた部分はありましたが、共感者、賛同者がいて行動に変化が生まれてきたことは良かったなと思っています。やはり、きちんと伝える、話し合うことが大事ですよね。メンバーに対して会社の方向性を示し続けること、メンバーも会社が目指したい未来を受け入れること。それを繰り返していくことでお互いが本質的に理解し合えるのではないでしょうか。

―――時間をかけてメッセージを浸透させていったことが、今回評価制度変更のタイミングではスムーズに進んだ背景だったのですね。大変参考になるお話、ありがとうございました。

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