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人事部門が会社の売上を追う?スタートアップの組織作りを経験した3人が思う「人事が大切にすべきこと」

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【対談】組織ステージやタイプごとに考える「強い人事制度」とは? #1/3

スタートアップの人事責任者を経験した3名を招き、「組織規模やビジネスモデルごとに考える、強い人事制度とは何か?」というテーマでトークセッションを開催しました。人事制度を考えるためには、まず人事として何を大切にするべきか、そして何を身に付けるべきか。更にはそれぞれの経験から、これまで具体的に導入した人事施策の事例までお話してくれました。
全3回に分けてお届けする本セッションのレポート、#1/3では、3名が語る「人事が大切にするべき考え方」をご紹介します(モデレーター:株式会社コーナーCOO 小林 幸嗣) 

▽参加者プロフィール

西島 悠蔵
株式会社土屋鞄製造所 人事本部 人材開発課 課長
ANAにて3年間パイロットとして勤務した後、リクルートキャリア社にて中途採用リーダー、その後ベルフェイス社の人事・広報チームマネージャーとして、社員数10名から80名への組織拡大に貢献。2019年7月より現職。
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木元 豪
株式会社NALU 代表取締役
Web受託開発会社の経営に携わった後、リクルート社にて開発マネジメント⇒人事部門へ異動。その後独立し、スペースエージェント社のCHROを担う。自身の会社では人生の選択肢を広げるプラットフォーム『KIZKI』を開発。
>>『KIZKI』

Huydung Lequang
リフリード株式会社 取締役
レバレジーズ社にて採用コンサルティングに従事した後、サイバーエージェントグループにて人事を約6年経験。その後、ベンチャー企業数社の人事コンサルティングを行いながら複数社を経営し、旅行用品のレンタルサービス『flarii』などを運営。
>>『flarii』

生産性?エンゲージメント?人事が追うべき指標とは

Huydung Lequang 氏(以下、レック):売りが伸びる組織なのか、離職率が低い組織なのか。「強い人事制度」とは、どういったことが実現できている組織をイメージしますか?

小林 幸嗣 氏(以下、小林):これ、皆さん実態どうですか?事業側はやはり売上や生産性を意識すると思いますが、人事としては、何の指標を見ていくのか。

西島 悠蔵 氏(以下、西島):僕は「生産性」を前の会社の時から意識していましたね。特に営業などのフロントメンバーの場合は、一人あたりの売上と人件費。人件費そのものというよりは、「労働時間に対して、どれくらいの金額を稼いでいるのか」を気にしていた。

ただ、難しいのは、会社の中の人件費比率ってそんなにデカくないです。どれだけいじっても全体の数割にしかならない。会社の全体が見えるようになっただけに、その中だけだと大した動きじゃないと思い、最近はいろいろ手を出すようになりましたね。

レック:私は、人事の指標はやはり、誰を入れるべきか。誰が活躍していて辞めさせないべきか。そのあたりなのかなと思います。最近だと、eNPSを入れて会社へのロイヤリティを見ているのですけれども、そこの部分が人事の役回りなのかなとも思っています。

自分の働いている会社がどれだけ誇れるか。「どれだけリファラル採用で呼べるか」
売りに直接関係しないけど、これが強い組織なのかなと。

人事は「売上」を意識するべき

木元 豪 氏(以下、木元):eNPSはKPIとして役に立ちますよね。ただ、離職率を何のために下げるのだろう、eNPSは何のために上げるのかを考えると、最終的に人事が追わないといけないのは、極論ですが「売上」なのではないかなと。

そのためのKPIをどこにするかは、組織フェーズや規模によって異なりますが、僕は、CHROや人事部長といった人間が見るのは、「従業員あたりの売上高」などの売上に繋がる数値で、最終的には「売りが伸びる組織」を作ることだと思っています。

小林:会社によっては、もしかしたら人事にPL開示がされなかったり、定量値として、売上のどこに紐づいているのかが分かりにくいケースもありそうですよね。

その場合、eNPSは事業貢献度の先行指標になるとも言われているので、オペレーションが確立されている組織なら、eNPSに集中することでオペレーションが綺麗に回り、結果的に生産性が上がると言えたりする。

そういう意味ではもしかすると、先行指標を追っていくことが最終的には売上に繋がることもあるのかもしれないですね。

西島:そうですね。ただ、人事の仕事自体が、手前の指標だけでも「やっている感」があって、だから多分、最終的な売上を意識している人事が少ないのかなと思います。それでも回るからって、考えないことが多い。これは、自戒を込めてですが・・・(一同笑)

先行指標を追うにしても、売上や利益というものを、人事が意識が出来る状態にもっていくのが、もしかしたら一つ、「強い組織」に紐づく要素なのでは、という気がしますね。

組織開発とは、社員の生産性を最大化すること。そのために人事に求められることとは?

木元:「強い組織づくり」って、中にいる人材がどれだけ生産性高く事業活動できるかを作り上げる部分。ビジネス側は事業を前に進めるために事業を作っていて、人事がやらなければいけないのは、言い方は少し悪いですけど、中にいる人材が有意義に生産性高く活動できる仕組みづくりをするということ。これが「組織開発」だと思います。

だから、どこに軸を持って決めていくのかが大事で、「ティール組織を作りたいからティールに合う人材を集める」ように、ビジネスモデルにフィットする組織のモデルを決めて、採用していく方法もあるかなと。

ただ、後付けで軸を作らないといけない場合もあって、その時に今いる社員のカルチャーやリテラシーがフィットしていないのに、 「ティール型の組織にしよう!」と理論だけ掲げると、めちゃめちゃ時間が掛かるし効率悪いですよね。

だとしたら今いるメンバーをより大事にして、いかにそのメンバーが生産性高くやれる場を作るか、ということが大事だと思います。

―― 参加者事例紹介 ――

小林:木元さんは、いくつかのスタートアップ企業へ人事制度導入を経験されていますよね。その中の事例でも、何かありますか?

木元:資本集約型のSaaS事業、アーリーステージの会社の時に、組織モデルとしてはグリーン型の組織(※図1)を作ろうとしたことがあります。

図1:ティール組織に至る組織の進化形態

事業とステージを考えると、そういうアメーバ的な組織を作らないといけないと。ビジネスモデルや規模にフィットする「あるべき」組織のモデルを考えました。
ただ、結果としては導入に多くの時間を使ってしまい、スムーズな立ち上がりにはなりませんでした。

事業フェーズへの理解浸透、情報開示、ルール整備などの取り組みを進めましたが、既存の社員のリテラシーや意識レベルの把握が弱いままの状態で「あるべき姿」から落とし込んだ結果、全社員にインプットするまでに結構なパワーと時間がかかりました。スピード感が仇となり、もっとうまく進めることができたのではと反省しています。

この経験があるからこそ、あるべき姿は持ちつつも「人に合わせた組織をつくる」としていかないと、机上の空論になるし、逆にあるべき姿に持っていけたとしても、現場メンバーの想いとズレが発生して結果として効果が薄くなると感じました。

でもスタートアップとかって、ティールやろうぜ、OKRやろうぜ、とフレームワークに手を出したがる人も多いと思っていて、それも大事なんだけど、そこにどんな人達がいるかってところをしっかりと見極めないで導入しちゃうのは本当にやめようね。って話しですね(一同笑)

小林:フレームみたいな形で、「この事業モデルとフェーズだったら、この人事制度が良い」というのは、あるべき論としては言えるかもしれないですけど、実態は、逆に乖離が生まれる可能性があるということですね。

木元: そうですね。僕の中で「強い人事」って、そういうことなのだと思います。その組織をしっかり観察してデータ取ってイシューを掴みに行く。うちの事業はこうで、うちにいる人はこうで、市場環境はこうでを理解することが大前提あって、且つそこに対して自分の引き出しを持っている。

OKRがあるよ、ティールがあるよ、MBOがあって識学があるよ・・・といったフレームワーク的知識量と、エモーショナルな部分で社員を巻き込んで、組織を作りあげる事が重要だと思います。

僕らの顧客は組織のメンバーじゃないですか。 毎日みんなと仕事をする中で、 制度やルールを作ったんだけど、不満を言われて。「俺だって、みんなを良くしたいと思ってやっているのに」・・・というのは嫌じゃないですか (一同笑)

でも絶対そういうことがあると思っていて、だからこそ当たり前のことですけど、人事の引き出しと、組織のビジョンがあって社員を巻き込んでいくっていうのがめちゃめちゃ大事だと思います。

それでもあるべき姿ファーストで制度やルールを導入してしまう事もあると思っていて、(リクルートを出てWill/Can/Mustを入れるぞ。みたいな(一同笑))
その時に大切なのは事業やエンジニアサイドと同じく、人事側もいかにアジャイル的に組織を改善していけるかだと思っています。

「PLに貢献する人事」としての視点はどのように身に付けるのか

木元:個人的には、自社の事業モデルはなにで、VPはこれ、事業モデルはこうなってて、ポジショニングはどこで、市場環境はどうなっているか。などの事業サイドの理解が大切だと思っています。

人事がBSCやSWOTをやって事業側をしっかりと理解していれば、いま自社に必要な人材はこんな人で、組織はこうなるべきだというのが分かると思います。それがファクト。それに対して、先程の知識量の引き出しを掛け合わせていくのかなと。

小林:ずっと人事の現場にいると、その考えを身につけるのが難しそうですよね。皆さんは、事業側のご出身ですよね。

レック:私も事業側の経験ですね。人事の中だと、木元さんがおっしゃるSWOT分析の切り口をやる人は、あんまり聞いたことがないですよね。採用要件を部署に聞いて、採用人数を言われて・・社長や現場に言われたことだけをやっている人は多いでしょうね。

木元:そうですよね。僕は開発側出身なので、こういうのは結構身近にありましたが、人事の中でこういった観点がある方は多くないのかなと感じます。だからこそ、上手く活用すると一つ抜けれるし、差別化になるのかなと。
僕は、これらをよりちゃんと理解する為にリカレント教育で大学にも通っています。

人事が一番、事業や組織を理解していないと口説けないですし、重要なポイントだと思います。

レック:僕はコンサルで新しく入る時は、全部のメンバーと5分ぐらい話します。大体50~100人くらい社員がいる場合が多いので、2日間ぐらいかけてメンバー全員の話を聞いて、商品を理解して、そこから人事戦略を提案します。今この会社にどんなメンバーいるのかを把握してからですね。

西島:大きくなればなるほど、そこの観点が薄くなるというか、見なくても仕事が回るという感覚があると思います。だから、今の話が世間一般では、稀有な話だと思います。

でも、それぐらいやらないと、組織って作っていけないですよね。あるべき姿とか目指す方向感とか、先程の木元さんの話とかまさにその通りだと思います。

経営をゴールを置いた時に、じゃあ会社として、極端ですけど「この人切らないといけない」ということが出てくることもある。でもその時に経営が見えていないからこそ、「この人は辞めさせちゃいけないのだ」、「離職率が・・」、「離職率をゼロにするのが正解だ」っていうズレた議論になる。まずは、そこの一番上のレイヤーから考えていくのが大事だと思います。

事業現場を経験してから人事になった方が良い

木元:会社によっては、人事部長といった、人事を統括している人がそのマインドなわけですよね。2010年ぐらいまでは、日本の産業の仕組みや人事の仕組みはひとつのロールモデルで、それこそ世界中の人が日本の経営を学びにくることもあった。その時はそれが市場にフィットしていて、正しかったのだと思います。しかし結局今はそうじゃない部分もあって、変わらないといけない。でも変わりきれない、が至るところにあると思っています。
人事も、人事一筋っていうロールの作り方を変えた方が良いのではと。

西島:初期配属からずっと人事しか知らないというよりも、違う経験を積んだ方が良いですよね。

木元:そうですよね。事業の現場って、必ずぶつかるじゃないですか。例えばビジネスサイドは利益を考えていて、開発側は資産を指標に考えているとか、考え方が違う部署同士で事業を前に進めないといけない。

おそらく「事業と人事」でも、先程の話もそうだったかと思いますけど、 事業側はPLやキャッシュフローを見ていて、人事は離職率や人材の資産を見ている・・という目線の違いがある。その時に、何を経営の中で大事にしないといけないか、他を経験してから人事に戻ると、見方が全然違うんじゃないかなと思います。
人事として成長する為には様々なロールを経験する事が重要で、今後はそういった視点を個人が持たないといけないのかもしれないですよね。

レック:直で人事じゃなくて、事業を経験してから人事をやる。これはひとつの解ですよね。

次回もお楽しみに!

今回は、組織を作る上で基盤となる「人事が大切にするべき考え方」についてご紹介しました。次回は、多様な職種が存在する組織でどのような取り組みを実践できるか、プロダクト中心の組織、営業ドリブンの組織、職人が働くメーカーと、様々な企業を経験してきた3名の具体例を交えながらご紹介します。お楽しみに!

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